「親の介護はじめました」~アラフィフ女子の風物詩~

夏の時期になりますと、「冷やし中華はじめました」という貼り紙が
店先に貼り出されますが、とうとうわたしにも その時期がやって来ました。

題して

「親の介護はじめました」

はじめまして、わたくしアラフィフティーで、主人と二人暮らし、
実家から車で10分ほどの所に住んでおります。

実家では、80代前半の父と70代後半の母と、そして40代になった弟が
3人で生活をしておりました。

これまで、弟が同居してくれていましたし、両親とも持病がありながらも
まあまあそれなりに生活をしていましたので、わたしが週に何度か実家に
顔を出す程度でも、両親が生活していく上で大きな問題はありませんでした。

しかし、数年前から少しずつ母のようすが気になり始めました。

例えば、実家から表の通りへ出るための細い道で母が突然転んで
顔面を強打したという連絡が入り、駆け付けたところ顔に大きな痣が
出来ていましたから急いで車に乗せて病院へ連れて行きました。

病院ですぐに治療してもらえたので大事に至らなくて済んだのですが、
母は転んだことをまったく覚えておらず、どうしてわたしは細い道に
横たわっていたのか、顔を強く打って青あざが出来ているが
一体どういうことなのかさっぱり分からないということでした。

それを聞いてわたしは少し不安になりましたが、それでも、
どちらかというと認知症の心配よりも、もともと足が悪いので
いよいよ悪化して歩けなくなり車椅子生活になることを恐れていました。

と言うのも、母は外交的な性格で友だちも多かった方ですし、
しょっちゅう電話などでおしゃべりを楽しんだり、また、
本がとても好きでしたからいつもいつも読書をしていますので、
高齢の割りには頭を使っている方だから、大丈夫だろうと思っていました。

それでも一応念のために、毎日顔を突き合わせてすぐそばで見ている父に
母のようすを聞いてみますと、「確かに物忘れはあるようだが、
今のところはボケてはいないのではないか」と言うことでした。

その理由としては、洗濯機の水の止め忘れや、風呂の湯沸しの止め忘れ、
料理のときにもフライパンに火をつけっ放しなどがあるにはあるが、
それでも、今までと同じように買い物に行ったり炊事をしたりと、
それほど大きく変わった様子はないということです。

また、父が「最近少しボケよらせんか?」と母に聞いても
「わたしは、いたって正常だから大丈夫!!」との答えのようで、
今のところは問題ないのではとのことでした。

そのようなわけで母の認知症について少々の不安がありながらも、
急激に悪化しているわけでもなさそうなので、
しばらくの間ようすを見ようと自分の中で得心していました。

しばらく小康状態が続いたある日、母から電話があり
「動くことが出来ないほどかなり足が痛いので、
買い物に行って来てくれない?」ということでした。

今までは母親の方からの買い物の依頼というのはほとんど
ありませんでしたし、もともと母は痛みに関してはものすごく我慢強い人で、
この人には痛点がないのではないかと思えるほど「痛い!」という言葉を
聞いた覚えがありません。

その人が、「痛いから・・・」ということは、よほどの痛みなんだろうと
思いつつ、買い物を引き受けました。

そして、その時に介護スイッチ”カチッ”と入った気がしました。

夏の時期が終わりますと、「冷やし中華はじめました」の貼り紙が
店頭からはがされ、メニューからも外されて、冷やし中華が終わりとなります。

そうです、あくまでも冷やし中華は夏の風物詩ですから、
注文が殺到してとても忙しかった日々もいつかは一段落して
やがてふつうの生活に戻っていきます。

では、わたしの「親の介護はじめました」の看板を

取り下げる時期はいつ来るのでしょうか?

いつ終わるか誰にもわからない・・・

親の介護はじめました」はじまり、はじまり。

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